個人再生法の歩き方
一族の「執事」として家族のさまざまなコンサルタントの役割を果たし、女中や付き人の不正を監視するというプライベートバンカーではカバーしきれない任務までやらせることができる。
ファミリー・オフィスの資産運用は銀行などのプライベートバンカーに委託するか、オフィスで資産運用の専門家を雇うことになる。
あるプライベートバンカーは、資産の管理、運用の仕事は正直で、有能で経験豊かな確かな“眼”が必要なむずかしい仕事だ。
そして優れた専門家を見つけるのはもっとむずかしい」と言っている。
ニューヨークに「U.S.トラスト」という信託と投資顧問に力点をおいたプライベートバンクがある。
1853年の設立の商業銀行だが、最古の投資顧問会社ともいわれる。
こんな専門会社でも失敗する。
U.S.トラストは70年代の中頃、ちょうどアメリカで株式委託手数料が自由化されたアメリカ流“ビッグバン”(メーデーといわれる)の頃だったが、株式運用で失敗し、大損を出し、20人いた調査部員を4人にせざるを得なかった。
リストラを断行し、商業部門を縮小し、信託部門に特化し、今は信託業務と富裕層を対象にした資産運用業務(プライベートバンキング)に専念している。
経営危機を苦労して乗り越えたせいか、幹部の発言も説得力がある。
いわく「流行を追いかけて危険に目をつぶるのが投資で大損する早道だ」「運用を委託する顧問会社や運用者の仕事ぶりをよく監視することが大事だ」「30年かけて築いた財産は30日で消えることがある」「有能な資産運用者というものは、会計や税務の知識にうといものだ。
また、会計や税務に強い人は資産運用には適さないことが多い」「大手の銀行というところは規模が大きすぎ、従業員の回転が速いから、行き届いた個人的金融サービスをするには無理がある」。
投資顧問会社やファンドマネージャー(運用担当者)も神様ではない。
運用はうまくいく時もあれば失敗もある。
時には不正を行う者もいる。
ファミリー・オフィスが資産の管理や運用で失敗し、消えてしまった大金持ちやファミリーは数知れない。
真実、財産を守るのはむずかしい。
アメリカはかつて1万5000余の商業銀行があったが、80年代の過度の不動産融資による経営破綻、規制緩和で競争激化による淘汰、その後の合併、吸収等により、いまは1万行を割っている。
商業銀行は信託免許を受ければ、さまざまな信託業務を行うことができるが、規模と採算性の問題もあり、信託免許を保有する銀行は、大手を中心に約30%である。
「信託」というのはイギリスで生まれ、アメリカで発展した制度である。
アメリカの信託業務は大別すると、法人信託と個人信託に分かれるが、前者を行っている金融機関の数は後者の約半分である。
大手の商業銀行では、バンカメリカのように信託部門を別組織にしているケースが多い。
法人、個人ともに信託業務のサービスは、日本の信託銀行と同じように資産の運用管理も含まれ、単純な保護預かり業務から、増資や配当金、利金の受払いも行うカストディ(保管)業務、投資顧問業務も行われている。
個人信託では、遺言信託や遺産管理の業務、後見人業務などが重要な部分を占め、プライベートバンカーの大事な仕事になっている。
アメリカ人の海外投資が増加するに従い、海外の証券の管理を行う需要が高まり、いわゆる「グローバル・カストデイ」に注力する大手銀行が増えている。
グローバル・カストディ業務の構築には、莫大な資本力と国際ネットワークが必要である。
どうしても大手の銀行が有利で、あり、中小はついていけないので業務は寡占化している。
カストディは、アメリカにおいても、信託業務の基本業務であり、結果的に信託財産も便利で、信用力もある大手に集まりやすい。
アメリカの信託業務は大手に集中し、信託業務を営む金融機関のうち上位5%が口座総数の約80%を占め、受託財産高は全体の90%を占める、といわれている。
一口にプライベートバンキングと言っても、国によって性格がかなり異なる。
スイス型はプライベートバンクの長い伝統に培われた「個人に対する財務サービス」の性格で、税務や相続等の問題解決など極めて個人的な相談から資産の保全運用まで幅広く、“富裕層の総合的な財務コンサルタント”という色彩が強い。
イギリスのプライベートバンクもスイス型に近いが「資産運用」にウエイトが置かれ、その運用方法はスイスよりかなり積極的でグローパルである。
運用には自社設定の投資信託を、税務では「タックスへイブン」や「信託」をよく使う。
大手のプライベートバンキングはややアメリカ的であろうか。
スイスのプライベートバンカーは家柄がはっきりしており、優秀で、守秘義務など倫理感がしっかりしている、と言われる。
転勤もなく、生涯、富裕な人達の相談相手として職業生活をまっとうする、顧客ファミリーの“執事”のような職務である。
これに対する収入は決して悪くない。
階級社会の欧州にあって地域社会では“パンカー”としてそれなりに地位を得ているが、目立たないようにしている。
しかし、プライベートバンキングといえども人間がやっていること、神様ではない。
運用の失敗もあれば、時々不祥事も起き、新聞の話題になることもある。
スイスでは資産運用は一般的に非常に保守的で、“運用”というより元本を減らさない“管理”に近い。
株式の組入れ構成は、最も積極的な場合でも運用資産の30〜40%までである。
売買はあまりやらない。
流行の先物やデリパティブの取引はまずやらない。
投資のための資金の貸出も原則的にしない。
これに対して、米国型は資産運用に重点をおいてパフォーマンスを重視する。
シティバンクやバンカメリカなどのプライベートバンキングは投資銀行や証券会社のそれとたいして変わらない。
売らんかな、の積極型である。
彼らのバンフレツトや広告文から見ると、“マルチカレンシー運用“世界の証券市場へアクセスのできる運用体制”とか、“ベストパフォーマンスを狙った24時間運用体制九“為替変動に対する迅速な対応”とか、“個人的な融資九などの過激な文言が目立つ。
スイスと違って融資ビジネスにも積極的である。
税務対策とか、相続の相談などという文言は“おざなり”でただ並べてあるだけ、という印象だ。
アメリカのパフォーマンス志向の金持ちには、これで効果があるのかも知れない。
しかし、同じアメリカの富裕層でも税務や相続にウエイトをおいている金持ちは、資産の預け先が大手銀行であっても、スイスやタックスへイブンでの運用を利用している。
これはアメリカの税務当局が近年税金取立てに厳しくなって、財産の公開を追求されることが多くなってきた、という背景でスイスなど海外への資産逃避が増えているとみられる。
これがBBHやモルガン・ギャランティ・トラストなど、アメリカの伝統的プライベートバンクになると、ややスイス型に近くなる。
アメリカのプライベートバンクのパフォーマンス重視の方向は、顧客自身が税金や相続については専門の税理士(タックス・コンサルタント)や顧問弁護士を抱えているので、プライベートバンカーは資産運用管理の専門家でさえあってくれたらいい、という背景もある。
アメリカではプライベートバンカーは投資顧問に近い存在といえるだろう。
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